低用量ピルでしばしば懸念されるのが「血栓症」です。
低用量ピルの服用では、喫煙者が副作用として血栓症を起こす確率が高くなると言われていますが、喫煙者でなくてもピルの服用時に血栓症に気をつけたいのが飛行機や車での長期移動です。
座った状態が長く続いてしまうことで心配することで、血栓症が起こるのではないかという心配の声があがります。
低用量ピルで起こり得る血栓症とは何なのか、飛行機に乗る際に気をつけたい点などを見ていきましょう。
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血栓症とは
血栓症とは、血管内に血栓(血液が固まったもの)が作られて突然血流が閉塞する病気のことです。
血栓が脳の動脈にできることで脳梗塞を起こしますし、心臓の動脈につまると心筋梗塞を招くことで、非常に危ない状態に陥る可能性もあるのです。
肺や腸に血栓がつまることもありえます。
血栓症の症状
脳に血栓症が起こった場合、ろれつが回らない、手足がしびれるなどの症状が現れます。
【脳梗塞の症状】
・突然の片側の手足の麻痺
・顔面の脱力
・ろれつが回らない
・しゃべりにくい など
心臓に血栓がつまった場合は、胸が強く傷んだり吐き気や冷や汗が起こったりするようです。
【心筋梗塞の症状】
・強い胸の痛み
・吐き気
・冷や汗
・呼吸困難 など
ピルが血栓症を起こす?!
低用量ピルでは下記のような副作用が起こる可能性があります:
・むくみ・体重の増加・乳房の張りや痛み・頭痛・吐き気
・下痢、便秘・眠気・うつ・抜け毛
・血栓症・不正出血・肝機能障害・心臓への影響・子宮筋腫
FDA(アメリカ食品医薬品局)の調査によると、低用量ピルを服用していない女性の静脈血栓症発症のリスクは年間10,000人あたり1~5人であるのに対し、低用量ピル服用女性では3~9人と報告されています。
どうしてピルを飲むと血栓症になる確率が高くなるのでしょうか。
その理由は、ピルを飲むと血液を固める物質である「プロトロンビン」「フィブリノゲン」という物質が増加し、逆に血液を固めないとする物質が減少してしまうからです。
長時間のフライトで血栓症になりやすい?!
長時間のフライトや車移動などでずっと身体を動かしていないことで、「エコノミー症候群(旅行者血栓症)」という病気が起こる危険性があります。
飛行機のエコノミークラスの窮屈な座席で起こりやすいことからこの名がついたといわれています。
下肢の深部静脈(足の筋肉より内側にある太い血管)に血の塊(血栓)ができることから、「深部静脈血栓症」とも呼ばれています。
しかし、エコノミークラスに限らずビジネスクラスや車の中、デスクワークなどでも起こりえるのです。
エコノミー症候群の初期症状としては、足が赤くなったり、むくんだり痛くなったりします。
このエコノミー症候群は、まさに血栓症が起因しているのです。
厚生労働省の資料によると、エコノミー症候群にかかりやすい人は下記のとおりです:
・高齢者
・下肢静脈瘤
・下肢の手術
・骨折等のけが
・悪性腫瘍(がん)
・過去に深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞等を起こした事がある
・肥満
・経口避妊薬(ピル)を使用
・妊娠中または出産直後
・生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症等)がある等
やはりピルを飲んでいる状態で長時間同じ体制でいると、エコノミー症候群にかかるリスクが高まるようです。
ピル服用中に飛行機に乗るときはどうする?
ピルを服用している女性が長時間のフライトに出かける際や車で長時間の移動をする際に、血栓症を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。
水分補給をこまめに
血液の凝固を防ぐには十分な水分が欠かせません。
移動中にはこまめに水分補給を取るようにしましょう。
近くにトイレがなかったり、トイレの数が限られていることで水を飲むことを控える方もいますが、1日に最低でも1リットルの水を飲むことが大切です。
なお、アルコールやコーヒーは利尿作用を持つため、飲みすぎると水分が失われてしまうので注意しましょう。
足を動かす
エコノミー症候群の初期症状に足のむくみがありますが、足を動かさないでいるとむくみやすくなってしまいます。
特に飛行機では自由に動き回るのが難しいため、長時間座りっぱなしでついつい足を動かすことを忘れてしまいがちですが、ピルの服用中は血栓症のリスクが高まっていることを意識して、こまめに足を動かすようにしましょう。
弾性ストッキングを装着する
弾性ストッキングは足を圧迫することで血流を促し、むくみを防止するグッズです。
一着3,000円程度で販売されており、フライト以外でもデスクワークなど普段の生活の中で装着できるので、足のむくみによる血栓症が気になる方はぜひ試してみてください。
血栓症になりにくいピルを選ぶ
低用量ピルには4つの世代があります。
第三・第四世代は第一世代と第二世代に比べると、血栓症になるリスクが2倍あるといわれています。
(情報元:フランスの医師たちは第3・第4世代経口避妊剤の処方を制限される)
よって、血栓症のリスクをできる限り抑えたい場合は第一世代または第二世代の低用量ピルを服用することをオススメします。
第二世代のピルとして「トリキュラー」というピルがあり、これは日本国内の婦人科やレディースクリニックでよく処方されているピルです。
エコノミー症候群や血栓症は発症する確率が非常に低い病気ではありますが、万が一発症してしまうと急に体調が悪くなり、後遺症を残すことになるかもしれません。
ピルを服用していて長時間のフライトや車での移動をする場合は、リスクを考えて予防策を立てるように心がけましょう。